COYOTE STORIES

アメリカにはじめてやってきてから、今年ではや20年が経つ。


もちろんたいへんなことも多々あったけれど、なんとかこの国の一員としてがんばってこられたことを、友人、家族、そして神様に感謝している。

そんなぼくをここで支えてきたのが、北米先住民(ネイティヴ・アメリカン-俗にアメリカン・インディアン)の思想だ。
'Native American Wisdom'という、スー、コマンチ、ラコタ、チェロキー、セネカといった部族を率いた名チーフたちの言葉を集めた本を、ぼくは常に読み返しては精神をピュアーな状態に保とうとしている。


今日ご紹介する本は、ぼくのもう一冊の愛読書、'Coyote Stories'である。


Mourning Dove(嘆くハト)という名の先住民の語り部の女性が、自然界に生きる動物たちの伝説を書き残したもので、アメリカでは1934年の初版から、いくたびにもわたって再版が行われ、いまも多くの人々に愛され続けている珠玉のような一冊だ。

'Coyote Stories'の前書きによると、先住民たちの社会において'語り部'というものは、太古の時代から長きに渡って、いわばプロフェッショナルな職業'としてリスペクトされていたらしく、この'嘆きのハト'と呼ばれた女性は、なかでもたいへん優れた存在であったようである。


もともと水の澄んだ川の主(ぬし)のような存在であったクジラが、なぜ塩辛い海に住まなくてはならなくなったか。
また、もともと非常に美しい容姿を誇っていたクモが、なぜあのような奇妙な姿になってしまったのかなどなど、先住民たちの目をとおして描かれた、彼らにとってのかけがえのない‘隣人’であるたくさんの動物たちの姿が、まるで映像を観ているかのようにページの端々から浮き彫りとなる。


また、この本にはよく知られた'ウサギとカメのかけくらべ'の話が載っている。
'油断禁物'、そして'諦めない努力'というのがこの話のポイントだが、少々ちがうのはエンディング。
動物達のレースでは、負けた者が勝った者に尻尾を差し出すというルールになっていて、カメはこの競争に勝ったあと、見事ウサギから尻尾を手に入れることになるのだが、その直後になんとスカンクに挑戦され(なかなか挑戦を受けないカメを脅すスカンクの描写が面白い。脅す方法については皆様もカンタンにご想像がつくはず。)破れ、結果どうしてスカンクがあのような白と黒のまざった色の尻尾になったかがあきらかになる。


この楽しくも美しい一冊の本、残念ながら邦訳されたものは出版されていないが、洋書として日本でも入手できるようだ。
本来、語り部の女性が子供たちに話して聞かせた物語なので、ていねいでわかりやすい英語によって書かれている。


興味のある方は、ぜひこちらのページで購入していただきたい。

動物たちは、ぼくたち人間にとって決してなくてはならない存在だ。
昨今、我々人間たちが、自分たちの生活環境を開発するために、動物たちの生活環境である自然を破壊し、結果それが彼らの生命体系をおびやかしているなどというニュースを聞くと胸が痛む。

最後に、'Native American Wisdom'のなかから、現在、イチロー擁するマリナーズの本拠地、米国ワシントン州の州都にその名を残した名チーフ、'シアトル'の言葉をご紹介する。


"獣たちのいない人間の世界を想像できるだろうか?
もしこの世から獣たちがみないなくなってしまったら、我々人間はみな、想像を絶する精神的孤独感におそわれ死ぬことだろう。
獣たちにおこることは、みな我々人間たちにもおきるのだ。
すべての事物は結ばれている。
地球にふりかかることはすべて、地球の子供たちにもふりかかるのだ。"


チーフ・シアトル (1786-1866)

aaaajyma.JPG

2008年、1月3日 記


2008年01月03日 |

トラックバック

このエントリーのトラックバックURL:
http://shiro.2-d.jp/mt/mt-tb.cgi/452

コメントを投稿

(いままで、ここでコメントしたことがないときは、コメントを表示する前にこのブログのオーナーの承認が必要になることがあります。承認されるまではコメントは表示されません。そのときはしばらく待ってください。)